実験 5: 電子スペクトルと計算化学―共役系分子の光吸収

この実験では共役二重結合鎖を持つ物質の性質を理論と実験の両面から確認します。共役二重結合鎖のπ電子は1次元の箱モデルとして近似できます。この近似の元で量子力学的な計算をすると電子が離散的なエネルギーを持つことが確認できます。これらのうちHOMOとLUMOの間の遷移は物質の持つ色として肉眼で観察できる場合があります。理論的な計算を行った上で分光光度計を使用することでこの色と軌道のエネルギーとの関係が明らかになります。

Point 1光学セルに封入されたシアニン色素

液状のサンプルを分光光度計で測定するときは、通常セルと呼ばれる容器に入れて測定します。この実験のように紫外可視分光を行う場合、紫外線が良く透過するように石英製のセルを用います。シアニン色素はインク等にも使用され、肉眼でも鮮やかに見えます。似たような構造の分子でも共役二重結合鎖の長さによって色が異なります。

Point 1光学セルの取り扱い方

正確な測定をするためには光学セルの扱いに注意が必要です。光学セルにはすりガラスが向き合っている面と透明なガラスが向き合っている面があり、必ず透明な面を測定用の光が通過するようにして測定します。実験室の装置では透明な面が左右になるようにします。また透明な面は指紋の付着を防ぐために素手では触らないようにします。

Point 3PC電源の入れ方

家庭用では少なくなりましたが、研究・開発用にはデスクトップ型のPCが用いられることも珍しくありません。こうしたPCはモニターとPCの電源スイッチは別々になっています。実験室のPCもモニターのものは正面右下に、PC本体のものは足下の黒い箱の正面上の方に分かれてついています。また電源スイッチが半押しにならないように注意しましょう。

Point 4分光光度計の取り扱い方

実験室の分光光度計はすぐに使用できるようにセットアップが済んでいます。説明書を置いてあるので良く読んで使うようにしましょう。サンプルの状態によっては吸光に複数のピークが観察できる場合がありますが、その場合は最も長波長のピークを測定してください。