実験 8: 分光光度法による鉄の定量―温泉水中の鉄イオンの分析

温泉水(草津・万座温泉)の中にppmオーダーで含まれている鉄イオンの濃度を決定します。定量分析の基本操作であるメスフラスコやピペットを用いた試料溶液の希釈・調製法、およびビュレットを用いた滴定法を学びます。また、標準溶液の滴定と検量線を用いた分光光度法の組み合わせによって、他のイオンが共存していても温泉中の鉄イオンの濃度を正確に求めることができる原理を理解します。

Point 1検量線用検液および温泉水試料の作成

ホールピペットで希釈鉄ミョウバン水溶液(0, 2, 4, 6, 8 mL)および温泉水(草津4 mLと万座10 mL)をそれぞれ25 mLメスフラスコへ正確に量り取ります。純水を加えて約半分の量にしてから、5 %塩酸ヒドロキシルアミン水溶液0.5 mLと0.1 % 1,10-フェナントロリン水溶液1 mL、次に緩衝液(pH 4.7)2.5 mLを加え混ぜます。さらに標線まで純水を加え25 mL定容とします。ふたをして4,5回上下を反転させて均一溶液にしてから約20分放置して発色させます。

Point 1器具の洗浄と共洗い

汚染や濃度変化を避けるため器具は使用前にきれいに洗浄し純水ですすぎます。またホールピペットやビュレットに溶液を取る際は共洗いの操作を行います。ビュレットにEDTA水溶液を最初に充填する際は、液を少量加えてからビュレットを横向きで回しながら内壁全体を溶液で濡らしてからコックを開け溶液を捨てます。(実験テキスト 基本操作8・1および8・3参照)

Point 3EDTA滴定法による鉄(III)イオンの濃度の決定

0.01 M 鉄ミョウバン水溶液10 mLをホールピペットでコニカルビーカーに量り取り、純水50 mLを加えます。これに緩衝液(pH 2.0)5 mLをメスピペットで加え、温めすぎないように注意しながら30~40 ℃に加温します。次にバリアミンブルーB指示薬をミクロスパーテル山盛り1杯加えてから0.01 M EDTA標準液で滴定し、紫色が淡黄色に変化する点を終点とします。

Point 4吸収スペクトルの測定と検量線の作成

調製した検液からブランクテスト用の検液を参照側のセルに、最も濃い8 mLの検液を試料側のセルに入れ、分光光度計でスペクトルを測定します。次に極大吸収波長を求め測定条件を入力します。試料側のセルに0 mLから8 mLまでの検液を順番に入れて極大吸収波長での吸光度を測定すると、吸光度と濃度の関係を表す検量線が得られます。測定点のばらつきが大きい場合は検液を調製しなおし再測定を行います。